金木犀

帰り道、自転車を漕いでいたら金木犀の香りがした……気がしました。もう咲いてるの?秋だなぁ。(彼岸花も満開だしね。)
金木犀には実は特別な思い入れがあります。小学6年生のころ、担任の先生の計らいで『親から子への手紙』というものが計画されました。子どもに内緒で親が子へ手紙を書いて、卒業の前に先生から配られたその手紙。私への手紙は母が書いてくれました。度重なる引越しで現物が何処へ行ってしまったか判らないのですが、その手紙の中に『金木犀の時期になると、泣くあなたを置いて仕事に出て行った寂しい日々を思い出します』というようなフレーズがあったのです。私は8月生まれ。母は私を産んで産休を取ったあと育休は取らずに仕事に復帰しました。金木犀の頃、祖母にまだ生後間もない私を預けて母は出勤したそうです。なので金木犀の香りを嗅ぐと泣く私を置いて出かけた朝を思い出す、そう母は私への手紙に書いてくれました。母から手紙を貰ったのはあとにも先にもあの手紙一通でした。きっともう彼女はそんな手紙を書いたことも忘れているでしょうが、私にとってそれ以来金木犀というのはほんのちょっと特別な花になったのです。